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『もしも我が身に起こったら。』
もしも我が子が殺人の被害者になったら。
もしも我が子が殺人の加害者になったら。
小学校1年生の子を持つ身として、中途半端な感情論では済ませられない、重くてリアルな物語。
加害児童にどんな汲むべき事情があったとしても、愛しい我が子を殺されて赦せる親がいるだろうか。
よく、殺人事件の裁判で極刑にならない理由として「被告は真摯に反省しており、更生の余地がある」と
いう表現がなされるが、誰かの人生を理不尽に断ち切っておいてその後反省したからといってそれが何なのだ?
どんなに反省しても、被害者遺族にどれだけ謝罪しても、絶対に償えないことというものはあるのに、と私は思う。
被害児童キヨタンの父親の言葉「殺された被害者は、加害者が更生するための生け贄か?」は、
加害者、被害者が大人であるか子供であるかに関わらず、現実のすべての殺人事件に共通するジレンマだ。
もし私の子が被害者になったら、相手の親に「あなたの子供を殺して償ってくれ」と言うだろうか。
逆に、我が子が加害者なら、子供に「死んで謝ろう。お母さんも一緒にいくから」と言えるだろうか。
……そんなふうに想像するのは簡単だ。
でも実際には、どちらの立場でも、何もできず、ただおろおろと狼狽え、泣き、怯え、座りこんでしまうのだろう。
物語は、被害者側、加害者側双方にわずかな光が差しはじめることを暗示して終わる。
最初に読んだときは、このラストは綺麗事だ、と思った。
作品としてのクォリティのために、救いのない結末にはできないよね、と。
だが、日を置いて数回読み直すうちに考えが変わった。
確かにこの結末は綺麗事だが、ここから後の、語られない物語の先にあるものは綺麗事ではない。
失われた家族への愛慕と喪失感を常に感じながら生きなければならない被害者の家族と、
犯してしまった取り返しのつかない罪を背負って生きなければならない加害者とその家族が、
ともに等しくその胸に抱くものは「祈り」だ。
いま、ここに生き残っている者たちが、この先いつの日か、心の平安を得られるようにという「祈り」。
現実の事件において、加害者の「真摯な反省」とやらが被害者遺族に実感できるケースは皆無に近いで
あろうことは想像に難くない。
しかし、だからこそ、この物語が描かれ、この結末が描かれた意味があるのかも知れない。